虹色の上向きの階段
2022 GLOBAL OUTLOOK

新たな市場レジームを乗り切る

私たちは、過去半世紀に経験したことがない新たな市場レジームに入っています。2022年も株式のリターンはプラスで、債券はマイナスになるとみています。債券よりも株式を選好しますが、2022年には潜在的に様々なシナリオが想定されるため、リスクを低減します。

投資テーマ

01

インフレとの共存

インフレ率は新型コロナ拡大前よりも高い水準に落ち着くとみています。中央銀行は利上げを開始するものの、価格上昇圧力に対しては引き続き寛容なスタンスを維持し、実質金利が歴史的な低水準にとどまる中で、リスク資産を下支えするでしょう。

インプリケーション:債券よりも株式を選好し、インフレ連動債をオーバーウエイトとします。

02

混迷を切り抜ける

経済の再開、新型のウイルス、供給主導のインフレ、中央銀行の新たな枠組みなど、一連のユニークな出来事が重なったことで、前例をみない混乱が起きています。政策立案者や投資家が現在の価格高騰を見誤る可能性があります。全体像を念頭に起きつつ、中心的な見方を軸に、上下に振れるリスクを認識しています。

インプリケーション:起こりうる結果の範囲があまりにも広いため、リスクを低減します。

03

ネットゼロへの航行

ネットゼロは今起きていて、気候変動はインフレのストーリーの一部です。ネットゼロへのスムーズな移行はインフレ率の上昇を最小限に抑えることにつながるとブラックロックは考えていますが、その場合であっても、供給ショックは起き、数十年にわたって続くでしょう。

インプリケーション:新興国よりも先進国の株式を選好します。

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新たな市場レジーム

世界的な株高と債券安は、1977年のデータ取得開始以来初めて2年連続となり、2022年が新たなレジームの幕開けになると考えています。この異例の状態は、ブラックロックのテーマの一つ「ニューノミナル」の次の段階で、現在も進行中だと思われます。中央銀行と債券利回りは、強力な経済活動の再開によるインフレの上昇に対して、過去に比べて反応が鈍いようです。そのため、実質金利(インフレ調整後の金利)は歴史的な低水準を維持し、株価を下支えすると思われます。

2022年に予想される大きな変化:経済活動再開には刺激が必要ないため、中央銀行は金融支援を一部取りやめ、結果として、株式のリターンはより小幅なものになるでしょう。FRBは利上げを開始するものの、インフレに対してより寛容な姿勢を保つとみています。FRBはインフレ目標を達成したので、今後はもう一つの使命である雇用情勢をどう解釈するかが利上げの時期とペースを決めることになりそうです。欧州中央銀行(ECB)は、インフレ見通しの悪化に直面しているため、緩和的な政策を維持し、強化さえする可能性が高いでしょう。

ブラックロックは従前からインフレに注意を促していましたが、今は「インフレと共存」している状態です。

前例のない経済活動の再開

こうした経済の再開は過去に例がありません。データの上振れであっても下振れであっても、度重なる大幅なサプライズが組み合わさると、政策担当者や市場が新たな現実に適応するために混乱するのは当然です。

それと同時に、中央銀行は新しい枠組みを導入し、インフレへの対応方法を変えつつあります。そして新たな変異株から生じるリスクは、その混乱に拍車をかけています。私たちは、新たな市場レジームに入らない場合にはどのような要因が考えられるのかを問いながら、様々な可能性について検討します。

シナリオが変わってくる可能性

新たな市場レジームの考え方が間違っている可能性として、2つのポイントがあると考えています。第一に、中央銀行の対応が変わる可能性があります。新型コロナウイルスの新たな変異株に絡む継続的なインフレ圧力に直面した場合にもしかしたら、中央銀行はインフレに対する従来の対応に戻る可能性があります。

インフレ期待が安定感を失った場合、中央銀行はより積極的な行動を取らざるを得なくなる可能性があります。インフレ率が目標を大幅に上回り、金利が上昇し、成長率が落ち込むという、債券にも株式にも悪影響を及ぼすスタグフレーションの典型的なシナリオに直面することになるでしょう。第二に、成長の見通しについて間違っている可能性があります。

このグラフは、FRBの利上げに関するブラックロックの見通しと市場の予想が、現在のような需給の緩みとインフレ水準の組み合わせに対してFRBが過去にどのように反応してきたか、そして今回いかに異なっているかを示すものです。過去の例に照らせば、FRBは2021年の時点で利上げを行っていた可能性が高く、これが新たなレジームであることを裏付けています。

今回は違う

米国のCPIインフレ率、FFレートと推定値:1995-2025年

米国のCPIインフレ率、FFレートと推定値:1995-2025年

将来の予測は実現しない可能性があります。出所:BII、米連邦準備理事会(FRB)、米労働統計局(Bureau of Labor Statistics)、BloombergとHaver Analyticsのデータを使用、2021年12月。注記:グラフは、米国のFFレート(オレンジ色の線)、前年比のヘッドラインCPIインフレ率(黄色)、およびFFレートのいくつかの予想経路を示しています。2022年から2025年までの米国のCPIは、ブラックロックの資本市場予測に基づく推定値です。オレンジの点線はブラックロックが予想するFFレートを示しています。紫の線は、政策金利の選択をインフレ率と需給ギャップの水準に結びつけた、単純な金融政策ルールによって示唆される経路を示しています。ピンク色の線は、現在の市場で予想されている経路を示しています。

投資を継続する

この新たな市場レジームを乗り切るにはどうしたらよいでしょう?好調な経済活動の再開によるインフレを背景に、ブラックロックは株式を選好します。ただし、ブラックロックのベースとするシナリオのリスクが高まっているため、リスクをわずかに引き下げ、新興国市場(EM)よりも先進国市場(DM)の株式を選好します。

先進国の国債はアンダーウェイトとしています。利回りは次第に上昇することが見込まれるものの、歴史的な低水準にはとどまるでしょう。インフレ連動債は、ポートフォリオの分散の点からも好ましいと考えています。戦略的な観点からは、分散と潜在的なリターンを理由でプライベート市場を選好します。

投資を継続する

リスク資産を取り巻く環境は、戦術的には好ましいものの、1年前に比べればやや不利になっていると考えています。ブラックロックは、戦術的なリスクテイクのスタンスにおいて、依然として株式を選好しつつ、よりバランスを取る形で縮小しています。これは、力強い成長と低い実質金利の中で、EMよりもDMを選好し、株式を適度にオーバーウェイトすることを意味しています。

注記:上記の見通しは米ドルベースです。2021年12月時点。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の出来事の予想または将来の成果の保証を意図したものではありません。読者は当資料中の情報に、特定のファンド、戦略あるいは証券に関するリサーチまたは投資アドバイスとして依拠すべきではありません。

本見通しでは広範な資産クラスと比較した個々の資産のパフォーマンスについて、ブラックロックがどのように考えているかを示しています。確信度は異なります

各資産の戦術的見通し

各資産クラスの6~12カ月の戦術的見通しと確信の度合いに基づく世界の資産クラス全体に対する見方:2021年12月

Legend Granular

過去のパフォーマンスは現在または将来の成果を示唆する信頼できる指標ではありません。指数に直接投資することはできません。注記:見通しは米ドルベースです。2021年12月時点。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の成果の予想あるいは保証を意図したものではありません。当資料中の情報は、特定のファンド、戦略あるいは証券に関する投資アドバイスとして依拠すべきものではありません。

ベースケース:名目金利の新時代(ニューノミナル)

インフレ率は穏やかに上昇し、中央銀行の反応は鈍く、実質金利は歴史的な低水準にとどまる。株式は好調となりうるが、債券は、イールドカーブが緩やかにスティープ化し、依然として苦戦を強いられる。

レアな組み合わせ

世界の株式のリターンがプラス、債券のリターンがマイナスになることは稀であり、2年連続で起こることは50年近くにわたってありませんでした。チャート「レアな組み合わせ」をご覧ください。このことは、私たちが新たな市場レジームに入ったことを示しており、強力な経済活動の再開で生じた混迷を切り抜けることが重要である理由です。

レアな組み合わせ

過去の実績は、現在または将来の結果を示す信頼できる指標ではありません。
指数は運用されておらず、手数料の対象ではありません。また、指数に直接投資することはできません。出所:BII、データはRefinitiv DatastreamおよびBloomberg、2021年12月。注記:このグラフは、1977年から2021年までの世界の株式と債券の米ドルベースの年間リターンを示しています。指数は、株式がMSCI All-Country World Index指数(1988年以前はMSCI World)、債券がBloomberg Barclays Global Aggregate Index指数(1991年以前はU.S. Aggregate)。

広範なシナリオが想定される

2022年はニューノミナルのストーリーの次の段階です。新型コロナの新たな変異株によって経済再開が後ずれしたとしても、経済再開は金融支援を必要としないため、中央銀行は政策金利を引き上げる準備をしています。しかし、継続的なインフレに積極的には対応しないと考えます。しかし、広範なシナリオが想定されています。チャートをご覧ください。

広範なシナリオが想定される

出所:BII、2021年12月。注記:図は仮想的なマクロ環境や政策の結果を示しています。これらは、2021年12月時点での株式と国債への影響に関するブラックロックの見解です。

説明のみを目的としています。本資料は、特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の出来事を予測したり、将来の結果を保証するものではありません。本資料は、特定のファンド、戦略または証券に関する調査または投資アドバイスとして、読者が依拠することはできません。

他のレジームについて

問われる安全資産としての国債
債務残高の増加に伴い、国債の安全性が疑問視されている。投資家は長期債を保有するリスクにより大きな対価を求める。イールドカーブは急激にスティープ化する。しかし、これは資産の相対シフトであり、株式は依然好調が見込まれる。

生産性の向上続く
持続的な設備投資が潜在的な成長を後押しすることで、マクロ環境はディスインフレーションの状態が維持される。FRBは忍耐強く、金利に対し中立以下に維持し、緩和的な政策を継続。イールドカーブはスティープ化する。実質金利が低い状態が続き、リスク資産が好調に推移する。

ブレーキを踏む
新型コロナの新たな変異株の影響等によって、経済再開の遅れにより、成長率は低下し、インフレ率は継続的に上昇する。中央銀行は、インフレ率の上昇に対して積極的な政策対応を取り、それに対する初動として利回りの急上昇が起きる。結果として高インフレを伴う景気後退を招く。金利の動きが株式に大きな打撃を与える。

インフレの暴走
インフレ期待値がポストコロナの混乱の中で固定されなくなる。ネット・ゼロへの移行に混乱が伴い、状況をさらに悪化させる。1970年代型のスタグフレーションが復活する。利回りは全体的に急上昇し、リスク資産は売られる。

停滞
成長率は低迷。労働市場には需給の緩みが残って、賃金の上昇を妨げるため、インフレ圧力が弱まる。中央銀行は経済成長とインフレを復活させることができない。イールドカーブはフラット化し、株式は業績の低迷により打撃を受ける。

典型的なリスクオフ
資産バブルの形成と崩壊。貿易戦争が再燃してグローバルな活動が損なわれる。中央銀行は対応に苦慮する。安全と思われる資産への逃避から長期利回りが急低下し、タームプレミアムは再びマイナスに転じる。リスク資産は打撃を受ける。

執筆者

Philipp Hildebrand
ブラックロック副会長
Jean Boivin
BII ヘッド
Wei Li
BII グローバルチーフ投資ストラテジスト
Alex Brazier
マネージング・ディレクター
Vivek Paul
BII シニア ポートフォリオ ストラテジスト
Elga Bartsch
BII マクロリサーチヘッド
Scott Thiel
BII チーフ債券ストラテジスト

 

重要事項
当レポートの記載内容は、ブラックロック・グループ(以下、ブラックロック)が作成した英語版レポートを、ブラックロック・ジャパン株式会社(以下、弊社)が翻訳・編集したものです。また当資料でご紹介する各資産の見通し(米ドル建て)は、米国人投資家などおもに米ドル建てで投資を行う投資家のための見通しとしてブラックロック・グループが作成したものであり、本邦投資家など日本円建てで投資を行う投資家の皆様を対象とした見通しではありません。 記載内容は、米ドル建て投資家を対象とした市場見通しの一例として、あくまでご参考情報としてご紹介することを目的とするものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではなく、また本邦投資家の皆様の知識、経験、リスク許容度、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的等を勘案したものではありません。記載内容はブラックロック及び弊社が信頼できると判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。各種情報は過去のもの又は見通しであり、今後の運用成果を保証するものではなく、本情報を利用したことによって生じた損失等についてブラックロック及び弊社はその責任を負うものではありません。記載内容の市況や見通しは作成日現在のブラックロックの見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の多様化に伴う変化に対応し予告なく変更される可能性があります。またブラックロックの見解、あるいはブラックロックが設定・運用するファンドにおける投資判断と必ずしも一致するものではありません。

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